
「御代替わりと伝統精神」
東京都神社庁庁長 小野 貴嗣
天皇陛下は今春ご譲位なされる。
御代替わりという荘厳な一大儀式を経ることによって、天皇陛下のご存在とご即位の重大さが認識される。
だからこそ、その諸儀式が古来の伝統を踏襲し、古式ゆかしく斎行されなければならない。
「陛下が大変である」と忖度して省庁が諸儀の内容の改変を検討したというが、国の根幹をなす重大な儀式を変更してはいけないのである。
まだまだ占領政策の影響がぬぐいきれない現代人の感覚や尺度で物事を図ると、必ず大事なことが抜け落ちてしまう。まさに、「昔の手振り忘るなよゆめ」である。
私たちは百二十五代にわたる大御心とお導きに敬意を表し、今上陛下の慈しみに対しても感謝の真を捧げたい。そして、その御代を受け継がれる皇太子殿下同妃殿下を敬慕の真心でお迎えしたい。
陛下は常に国の平安と弥栄を願い皇祖に畏敬の祈りを捧げられている。
我々国民はそのお姿を手本として、家族が共に思い遣り援け合い、また祖先に感謝して、家族の幸福を築いていかなければならない。
引用元:東京都神社庁ホームページ
天皇陛下がご譲位の御意思を表明なさって以来、マスコミ各社は挙って「ご退位」を連呼していました。
なんとなく、この言葉に違和感を感じていました。
SAPIO2017年3月号によるとーーーーーーー
【「天皇譲位」が「生前退位」に替わった理由 皇室の苛立ち映す】
中略
陛下がご譲位のご意向を最初に示されたのは、2010年7月22日のことだといわれている。2016年10月13日の日経新聞は、当時の羽毛田信吾宮内庁長官、川島裕侍従長などが同席する中、
陛下が「元気に勤めを果たせなくなる前に譲位したい」と述べられたと伝えている。
中略
そして昨年になって陛下のご意向を伝えたNHKのスクープでは、6年前の陛下の「譲位」という言葉が、「生前退位」という言葉にすり替わっていた。
「皇位を譲る」という政治的ニュアンスを極力少なくするために、「自ら皇位を降りる」という個人的行為に寄せていく工夫が垣間見える。
やはり・・・
ご熟慮にご熟慮を重ねられた上でのご意向発表から、約9年も過ぎて漸くのご譲位です。
奇しくも今年は「両陛下ご結婚六十年」の年でもあります。
長い間、重責を担われ続けてこられましたことに、心から感謝と敬意を申し上げます。
両陛下の末永いご健康をお祈り申し上げます。
欝々と不協和音を抱えていた時に、冒頭の「御代替わりと伝統精神」の記事に出会いました。
一言一句すべてごもっとも。その一つひとつに納得です。
心のわだかまりが消え、スッキリ晴れ渡った気持ちで、新元号を戴くことができそうです。